【日独比較】ドイツの不登校のイメージについて

日本の不登校児数は、16万人以上に及びます。(小・中学校)
(文部科学省「平成30年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」

さまざまな理由から学校に行けずに苦しんでいる生徒や、学校に行かないと自ら決断した生徒が日本には少なくありません。

ドイツでも、不登校はあります。

しかし、ドイツで不登校について話すと、日本で思い浮かべる不登校とはイメージが異なる場合があります。

本記事では、ドイツの不登校(Schulverweigerung:学校拒否)のイメージについて紹介します。

日本における不登校の定義

不登校について、文部科学省は

「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上を欠席した者のうち、病気や経済的理由による者を除いたもの」(文部科学省)

と定義しています。

記事の冒頭でも触れたように、その数は2018年の統計では16万人以上に及びます。

不登校の要因についても文部科学省は示しています。

例えば、「本人に関する要因」で最も数値が高いのは「不安の傾向がある(33.3%)」です。
逆に、最も低いのが「あそび・非行の傾向がある(3.2%)」です。

しかし、ここで疑問なのが文部科学省の不登校の定義では、病気を理由とした長期欠席は不登校には含まれないというところです。

例えば、抗うつ傾向にある子どもが不安の傾向にあるだけなのか、うつ病なのかによっては、厳密には不登校なのか・不登校ではないのかといった問題になります。

筆者も、中学生のときに約3年間不登校を経験しました。
抗うつ傾向が強く、今振り返ればうつ病の症状となんら変わりはなかったと個人的には思うのですが、当時の診断では「自律神経失調症」でした。

診断名が何であれ、本人・家族・学校の認識としては、「不登校」でした。
学校に行っていない期間を通して、軽い抗うつ剤も服用していました。
しかし、不登校だった約3年間を振り返ると、ベッドから起きあがれないほど重い抗うつ状態だったのはそのうちの約3ケ月間のみで、それ以外の期間は確かに文部科学省が定義する「不登校」だったと感じます。

しかし、日本で学校に行かない場合において、自分が文部科学省の定義する「不登校」かそうでないかは、特別な意味を持ちません
要するに、理由はなんであれ長期欠席しているという事実に変わりはありませんし、それが不登校なのか不登校でないのかは統計の数字以上の意味を持たないからです。

一方、ドイツでは不登校なのか不登校でないのか(病気なのか病気でないのか)は大きな意味を持ちます。
詳しく説明する前に、ドイツにおける不登校という単語とその定義を見ていきます。

不登校という単語

まず、ドイツ語で不登校という単語を調べます。
辞書で「不登校」と調べると、Schulverweigerung(学校拒否) という単語がそれに当てはまります。

ウィキペディア

ウィキペディアで日本語の「不登校」のページをドイツ語選択にしてみると、

●Schulverweigerung(学校拒否)
●Schulabsentismus(学校を習慣的に欠席すること、法的な表現)
●Schuldistanz(学校距離)
●Nichtschulbarkeit(就学可能ではないこと)
●Schulschwänzen(学校サボり、口語的表現)

※カッコの中は直訳です。

という単語が並びます。

ざっくりまとめると、Schulverweigerung(学校拒否) とは、 「義務教育中、(重大な理由なく)習慣的に学校と距離を置くこと」 とあります。

欠席連絡がない場合や欠席連絡があったとしても、疑わしい病気を理由にした欠席などを含みます。
また、子どもが毎朝学校に行くふりをして出かけており、自分の子どもが実際は学校に行っていないことを保護者が気づいていないといった場合もあります。

さらに、学校に来ていたとしても授業に参加しない、授業を妨害する場合も含まれるとあります。

さらに読み進めていくと、Schulangst(学校不安)という単語に突き当たります。

Schulangst(学校不安)の例としては、保育園から小学校の移行という環境の変化が負担になったり、安心できる両親の家から学校に行くのが不安だったりする場合、子どもは学校に行けなくなることがあります。
また、ドイツでも「良い成績を取らなくてならない」というプレッシャーやストレスによって子どもが学校から遠ざかる場合もあります。

福祉辞典での定義

続いて、社会福祉(ソーシャルワーク)辞典を確認してみました。
(FachLexikon der Sozialen Arbeit 8.Auflage)

内容をまとめると、

Schulverweigerung(学校拒否)
●義務教育中の子ども 

●学校のわずらわしさ、もしくは不安から学校と距離を取る 
●社会的に不利な階層・移民を背景とする家庭の子どもが目立つ 
●男子生徒が女子生徒よりも多い 
●10-14歳の子どもによく見られる 

とあります。

その原因としては、

●家庭環境の問題
●学校でのいじめ
●教師とのコンフリクト
●友達グループとのコンフリクト
●学校と家庭における相談相手の欠如

が挙げられます。

義務教育中、なんらかの理由で「学校めんどくせー」「学校きらーい」と学校に行かないことやさまざまな原因(プレッシャー、ストレス、人間関係など)から不安を感じ、学校に行けなくなることを指します。
日本の不登校の定義と同様に、病気等(しっかりとした医師の診断書がある)といった重要な理由がある場合はSchulverweigerung(学校拒否)に含まれません。

これらのことから、Schulverweigerung(学校拒否)という単語は、概念や現状の違いは多少ありますが、基本的には日本語で不登校と訳しても問題はなさそうです。

不登校とSchulverweigerung(学校拒否)のイメージの違い

しかし、実際にドイツでSchulverweigerung(学校拒否)という言葉を聞くと、日本で想像する「不登校」のイメージとは異なることに気づきます。

上記で触れたように、日本の不登校の最も多い要因は「不安の傾向がある(33.3%)」です。
一般的にも、不登校と聞いたときに、多くの人が
「その子は精神的に苦しんでいるのではないか」
「うつっぽいのかもしれない」
「暗い子ども」
といったイメージを持つのではないでしょうか。

しかし、ドイツではSchulverweigerung(学校拒否)と聞いた際、どちらかというと
「さぼっている」
「努力・我慢できない子ども」
「社会階層の低い家庭の子ども」
というレッテルが付いて回ることがよくあります。

例えば、YouTubeでSchulverweigerung(学校拒否)を検索したところ

ケース1
●毎朝学校に行くふりをして保護者に嘘をつく
●物事を継続して行うことが難しい
●保護者が長期間失業中
●罰金の支払い
ケース2
実習の面接日に寝坊し、連絡せずに次の日に面接に向かう
●保護者自身も問題を抱えており、自分の子どもの教育に戸惑っている
ケース3
●学校に行くモチベーションがない
●罰金の支払い
●警察がその子どもの元に行き、学校に連れて行く
といったドキュメンタリー番組の動画が次々に出てきます。

日本の不登校を想像していると、罰金警察といったワードが出てくることに驚きます。

不登校は就学義務の違反となる

ドイツで暮らす子どもは、教育を受ける権利だけではなく、就学をする義務があります。
日本のように、保護者に子どもを就学させる義務があるだけではなく、子ども自身もその義務を負います。

そのため、ドイツでSchulverweigerung(学校拒否)と聞くと、人々は真っ先に就学義務の違反について連想します。

義務教育は、州にもよりますが少なくとも9年間です。
多くの場合、6歳から始まります。

重大な理由がない限り、子どもが学校に長期間行かない場合、保護者は罰金を支払わなくてはなりません。

さらに、警察が家まで来て子どもを学校に連れて行くこともあり得ます。

ここからの文章は調べたわけではないので想像でしかありませんが、この就学する義務があるため、ドイツでは日本のように不登校に該当するか・しないかいう違いはとても重要になってくると思います。

例えばもし、不登校の理由がうつ病なのであれば、それは病気を理由にしたものであり、就学の義務を違反することにはなりません。
そのため、保護者も本当にその疑いがあるのであれば、積極的に病院に行き、診断書をもらおうとするのではないかと思います。

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まとめ:合うのはSchulangst(学校不安)?

本記事では、日本とドイツの不登校のイメージについて比較しました。

ドイツでは、「義務違反」や「サボり・怠け癖」といったイメージが強く、スティグマ(ネガティブなレッテル)の対象となっていることが多いです。

日本での「不登校」という言葉のイメージと最も合うドイツ語は、Schulangst(学校不安)だと思います。

※ドイツ語の訳は、筆者による直訳です。
正しい訳についてご意見がありましたら、ぜひ連絡頂ければ嬉しく思います。

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